雑音RADIO #2-1 リヒト(RihiTo)×YUNGYU EP「キャンディハウスビッチ」
撮影ロケーション:HITOTZUKI KOFU MURAL at 山梨中央銀行本店 via KOFU MURAL PROJECT MURAL ART by HITOTZUKI
このミューラルアートは甲府市が主催する「中心市街地ストリート再生事業」の一環として世界的なミューラルアーティストであるHITOTZUKIを招き、山梨中央銀行の協力により制作されたものです。
(甲府を訪ねてくれた友人は、必ずここへ案内します。)
詳しくはこちら
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雑音RADIOと題した本稿企画は個人的に会いたいアーティストのもとへ会いに行き、フリートーク形式のインタビューを収録。私的テキストラジオとして不定期で記事を配信していきます。
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彼らは夜とともにやってきた。リヒト(RihiTo)×YUNGYU名義でオンラインで発表されたEP「キャンディハウスビッチ」。打ち出したのはトラッピーでトリッピー、かつポップな原色の世界。その世界から飛び出した二人が、灰色に染まった雨の甲府にやってきたのだ。彼らの判断基準はシンプルだ。クールか否か。この記事を編集しながら見ていたストレンジャーシングス2の劇中、パンクガールへ変貌を遂げたイレブンのセリフを引用するとしたら「Bitch up!(イケてる!)」でいることがルール。イケてればいいっしょ!とでも言わんばかりに自由な言葉を紡ぎ、縦横無尽に動き回る彼らのスタイルには、80年代のパンキッシュなスラングが一周回ってピタリとハマる。 かつて自身のクルーFAKAXA(ファカクサ)を率いたYUNGYU。Jinmenusagiを始めとしたシーンの重要アーティストと共演し活動してきたリヒト。二人はどのように交わりBitch up!な「キャンディハウスビッチ」を産みだしたのか。(文中敬称略)
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FAKAXA結成から内紛を経て。
―今回のインタビューではお二人のそれぞれのバックボーンと、二人の出会いからEP「キャンディハウスビッチ」をオンラインでリリースするまでの経緯を聞かせてください。では、YUNGYU(ヤンユー)くんからどうぞ。
YUNGYU(ヤンユー以下:ヤン):僕はラップし始めて2年ですね。2年前に同じ会社で働いてたDJ MITSUAKI(ミツアキ)くんっていう山梨のDJがいるんですけど。YouTubeの動画が送られてきて。Jinmenusagi(以下:ジメサギ)さんの「Jinmenusagi」って曲が送られてきてやばいかっこよくて。そもそもヒップホップは自分なりに聴いてたんですけど、その瞬間が初期衝動でしたね。最初は仲間たちとひたすらサイファー※して、飽きたんで曲作りしようってなったのが最初です。自分の弟にエンジニア的な役割を担ってもらって最終的にはラップもさせて。そこで集まったのが「FAKAXA(ファカクサ)」というクルーなんです。
※数人で順番に即興でラップをしていくラップ表現、手法。バトルよりも、自身の意思の表明やコミュニケーションを取るための余興的な側面が強い。
【MV】Jinmenusagi - Jinmenusagi feat. Jinmenusagi, Jinmenusagi & Jinmenusagi via YouTube
―そのFAKAXAは惜しまれつつ活動終了しちゃったみたいですね。それはなんで?
ヤン:やっぱり人が集まると、もめ事が起きますよね(笑)今までくだらなすぎてあまり話してなかったんですけど。クルーのコアだった弟がやる気なくしちゃったんですよ。それで喧嘩しちゃったんです。
上野プレンティ(以下:プレンティ)※:みんなで集まるんですけど、兄弟喧嘩が激しくて毎回。無茶苦茶なんですよ(笑)
※元FAKAXAメンバー。現在は映像の編集制作や撮影としてYUNGYUと活動を共にしている。
ヤン:で、僕、弟にミックスとかレコーディングやってもらってたんで。録音環境がなくなっちゃったんです。リヒトさんとEP作ってる途中で。まだ未完成の曲があるのに投げちゃったんですね。
プレンティ:一番被害くらったのはリヒトさんだったっていう(苦笑)
ヤン:それでプレンティの家でレコーディング環境作って、なんとか完成させたのがEP「キャンディハウスビッチ」なんです。
―リヒトさんとの出会いはどんなものだったんですか?
ヤン:「PLASTIC BOB」っていう東京のイベントがあるんですけど、FAKAXAで出演したときにリヒトさんが見てくれたんですよ。そしたら声かけてくれて。
RihiTo(リヒト以下:リヒ):FAKAXAのライブ、パワーあって見てて楽しかったんですよね。その中でYUNGYUくんの動きとかラップとか、パフォーマンスがちゃんとヒップホップ好きなやつっていうのが伝わってきたんですよね。それでナンパしましたね。
ヤン:どんな曲聴いてるとかかっこいい曲何?みたいな情報交換をしていくんですけど。僕はリヒトさんに 韓国のラッパーの曲を聴かせたんです。「こういうのやりたいんですよ」って。そしたら一緒 にやろうよって言ってくれて、連絡先交換してやりとりして。それでまず「DRY ALL」って曲が出来ました。 その後に「プリティボーイフライ」が出来たので、このまま二人でEP作っちゃおうってなったんです。それがFREE EP「キャンディハウスビッチ」なんですよね。
【MV】リヒト(RihiTo)×YUNGYU - Pretty Boy Fly remix (Original Track by PUNCHNELLO) via YouTube
ネットと現実のギャップと。日本とアジア。
―EP「キャンディハウスビッチ」はどれくらいで出来たんですか?
ヤン:出会って半年くらいですかね。詰めて作らずゆったりやりました。最後らへんは集中して仕上げましたけど。EP出してから色んな人からやっと曲やろうって声かけてもらったりトラック送ってもらえるようになりましたね。
―「プリティボーイ・フライ」のYUNGYUくんバースで「今さらトラップじゃ無理そうだな」っていうラインが印象的だったんだけどその意図は?
ヤン:僕トラップは好きなんですけど、僕らの曲って、オケがそもそもトラップじゃないじゃないですか。フューチャーベーステイストなんですよ。誰もやってないようなことやりたいんで。ずっと王道の90’sの流れがあるヒップホップのスタイルだったのに、いきなりトラップっぽいのやり始めた人とか見ると「え」ってなるし。僕ら始まりがそこだったけど、同じじゃダメだっていう考え方ですね。
―その感覚が、初めてFAKAXAを聴いたときに僕が惹かれた理由かもしれない。フューチャーベースでがっつりラップしてる人、山梨ではいなかったし。新しいしちゃんとラップもうまい。って素直に思いました。
ヤン:たぶんトミーくん好みのトラックですもんね。フューチャーベースとかヴェイパーウェーブ系の。トラップの要素もありつつ、展開があるトラックが好きなんです。
リヒ:好きな部分が共通していますね。いつもYUNGYUくんが持って来てくれる音って、今まさに旬って感じのが多いんですけど意外とやってる人は少ないのかな。じゃあ俺らでやっちゃおうっていう。
ヤン:僕らみたいなスタイルの人もいるはいるっすけど、引っかかるまで長いんですよ。聴く方も見つけるスキルって必要だと思うんですけど。やる側はその人の耳に届けるスキルは絶対必要ですよね。
リヒ:発信する側はラップがうまいだけじゃだめなんですよ。いかにパブリックに向けてアプローチするか。キャラクターだったり、SNSひとつもそうだし、格好だったり。全てちゃんと人前に出す前提で考えないといけないですよね。ナチュラルに出来ちゃう人もいるけど。それは一握りですよ。僕はそれをいつも意識してやっていますね。
―ネットで普及しているような音やジャンルが一般層に広がったら、日本のヒップホップの裾野もさらに広がるかもしれないですね。それこそ韓国とか中国、インドネシアとかアジア周辺が盛り上がってるように。日本ももっと感覚的にオープンになるといいですよね。まだ、俯瞰してみるとそういったヒップホップアーティストは一部に限られている印象があります。 シーンは盛り上がっているけれど、更に外に向けたアプローチというか。一般の人だったり海外っていう部分では特に限られますね。
リヒ:今、ヒップホップはお金ない人がお金ない中で循環して消費されているじゃないですか。それをみんなで打破していくことが必要ですね。それこそ、今度、YUNGYUが開催するイベント※1で釜山からアーティストを呼んでやるっていうのは意味のあることで。それをきっかけに今度は僕らが韓国に行って曲作ったりっていう可能性にもつながるし。それで「It G ma」※2ほどではないにしろアジアで少しでもバズらせることができればとは思ってます。
※1YUNGYUが12月2日土曜日に開催するイベントについては後編で詳しく紹介
※2韓国のラッパーKEITH APEの楽曲。日本からはLoota、KOHHがフィーチャーされ大きな話題を呼ぶ。アメリカでアジアンラッパーの精鋭たちが一大ムーブメントを巻き起こした。
Keith Ape - 잊지마 (It G Ma) (feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh) [Official Video] via YouTube
ヤン:彼ら(後編記事参照)が日本に来る、僕らが釡山に行く。アジア圏で話題作りできるかが当面の目標です。
―今、stillichimiyaもタイを拠点に日本と行き来して、アジア進出に向けて動き出しているし(リンク記事参照)そういう目線は絶対に必要だなと僕も思っています。
リヒ:本当に音楽だけで食べて行くってなったらそれはしたほうが良いのかなとは思います。今の日本でプロップスあるラッパー達のようになれたとしても、一生働かなくていい額をキャリアの間に稼げるかっていうと難しい。だから目標を大きく持って少しでもそれに近づいていくことが大事だと思います。例え叶わなくても それに向かってやっている時は夢があって楽しいです。
―そう考えると作品性がこれからもっと重要になっていきますよね。ここ数年、KOHHを筆頭に日本語の言語性を極端に排除して作品性と音楽性を追求して、次のステージに行った気がしたんですけど。これからさらに新しいトピックを取り入れて作品を打ち出していかないと、日本独自の価値観だけでは外で通じないし、勝負できない。
リヒ:その点、韓国のアーティストはグローバルなトレンドをいち早くキャッチして自分たちの音楽として成立させるのがうまいですよね。USだけじゃなく海外の動向はチェックしてます。YUNGYUくんが海外、アジア圏の楽曲にアンテナ感度高いんですよ。そこで情報共有して外のアーティストと密接に繋がることが出来れば もし書面を交わすようなディールが来ても僕はビジネスベースの英語も数字の話も対応出来るので海外で曲やったりイベント出たりってことは可能になりますよね。それがお互いのスキルが機能する理想的な形です。
―二人の強みが活かせる形で勝負できるってことになりますよね。
「競うな。持ち味をイカせッッ」 (バキ/範馬勇次郎)(RihiTo)
―リヒトさんはどちらに留学してたんですか?
リヒ:スイスのジュネーブにいましたね。こう見えて、高学歴帰国子女なんすよ(笑)
—「She Wants to Move」聴いて思ったんですけど、リヒトさん歌もうまいですよね。
リヒ:僕そもそも最初はパンクのコピーバンドやっていたんですよ。留学していたときにコピーバンドやってた経験が活きてるかもしれないです。歌モノ好きですし。「She Wants to Move」に関して言うと、マンガ「バキ」シリーズの範馬勇次郎が言う「競うな!持ち味をイカせッッ!!」っていうセリフがあるんですけど。その言葉に感化されて自分のバックボーンである歌に振り切ってみたんです。
―名言メーカーである範馬勇次郎の名セリフの一つですね。
リヒ:例えばなんですけど、僕が今の若いコたち、JP THE WAVY※1みたいなセクシーなダンスと立ち振る舞いで マンブルなラップ載せてっていうのをやっても違うと思うし、かといってTHE BLUE HERB※2のような言霊を音に乗せて伝えるっていうのもどうかなぁというか。僕が自分らしく出来て他の人に出来ない事ってなんだろうって考えたときに、ルーツに立ち返ってシンガーの要素を入れたのが「She Wants to Move」です。
※1 2017年にバズった「Cho Wavy De Gomenne」を歌うラッパー、ダンサー。本曲はさまざまなリミックス、ビートジャックを生んだ。
※2 ILL BOSTINOをフロントマンに札幌ススキノから全国にカルト的人気を誇る重鎮。ライブや楽曲で唯一無二の存在感を放つ。ちなみに筆者がライブを見て涙したことがあるのはSHINGO★西成、田我流、THE BLUE HERBの三組である。
―曲名のタイトルはN.E.R.D.※に同名の楽曲がありますけど、バンドサウンドだし、メロディはだいぶ印象が違いますがサンプリングなのでしょうか。
※ファレルウィリアムスが幼なじみのネプチューンズのチャド、シェイと共に組んでいるバンド。今年7年ぶりのアルバムリリースがアナウンスされ、音楽シーンの大きなトピックとなっている。
ヤン:サンプリングなんですかねー。トラック良く聴くと原曲の声も入っていて面白いんですよ。
リヒ:うまくバンド要素を落とし込めたんで気に入ってますね。
―どの曲も二人の世界観とキャラが立ってて、楽しんで聴けました。 EPの中で言うと、僕は「Move You」が一番好きですね。
ヤン:人によって5曲の中で好きな曲がバラけるんで、EPの世界観を軸に良い感じにそれぞれの作品性を出せたかなと思ってます。
【MV】リヒト(RihiTo)×YUNGYU - She Wants to Move via YouTube
上野プレンティと切り取るキャンディハウスビッチの世界。
―PVもちゃんと世界観作ってるし、凝ってますもんね。ビデオに高確率でポップコーン出てくるじゃないですか。あれは世界観の繋がりだったり、メッセージがあったりはするんですか?
リヒ:言っちゃうと、ポップコーンがあるとそれっぽくなるってのが本音ですね(笑)YUNGYUくんとPV作るときは質感というか、「それっぽさ」を大切にしていて。「キャンディハウスビッチ」全体の世界観に沿ったアイテムを登場させていて、その一つがポップコーンだったんです。色だったりモノだったり、分かりやすく世界観を伝える手法の一つですね。
―確かにPV見ながら小物使いがうまいなーってビデオ見ながら思っていて。統一感があるんですよね。趣味性が色濃く反映されてるなって思って。KAWSのヘネシーボトルがチラッと出てきたり。バックトゥザフューチャーのホバーボードだったり。
リヒ:「キャンディハウスビッチ」のビデオで登場する小物は ほぼ僕の私物ですね。
―映像は全部、上野プレンティくんがやっているんですよね?っていうかいい名前だよね(笑)
ヤン:山梨に「プレンティ」っていうラブホがあって(笑)FAKAXAのころはSEXAって名前だったんですけど、変えろよって命名したのが上野プレンティ。
プレンティ:映像ディレクターとして、SEXAは自分でもねーなーって思ってたんで、YUNGYUに言われた「上野プレンティ」がしっくりきましたね(笑)
―映像、結構遊んでて面白いなーって思ってたんだけど、全部一人で作ってるんですか?
ヤン:僕とかリヒトさんの無理な注文もこなしてくれますね。毎回予想以上に仕上げてくれるのでビックリしますね。
プレンティ:アイデア出しは三人でやりつつ、リヒトさんがしっかり世界観伝えてくれるんで。シビアに作り込んでいきますね。今回のEPのビデオは三人が三人ともディレクターみたいな感じです。
【MV】リヒト(RihiTo)×YUNGYU - Candy House Bitch via YouTube
RihiToの世界とJinmenusagiと。
―リヒトさんは結構世界観が確立されている感が確かにありますよね。リヒトさんとジメサギさんの曲で「Around the World」とか、船の上で撮ってたり、スケールでかいですよね。
リヒ:留学していたときに、ルームメイトがインドネシアの富裕層のヤツで。あれはインドネシアで撮ったんですよ。クルーザー貸し切ってコモド島行くって言うから、これ良い映像撮れそうって思ってビデオにしましたね。
―途中、コモドドラゴンと撮ってますよね(笑)
リヒ:G-DRAGONがビデオで猛獣出したりするじゃないですか、ああいうのいいなーってその時思っていて。日本人でヒップホップのビデオにコモドドラゴン出したのは僕が最初だと思います(笑)猛毒持ってて肉食なんで、棒持ったガイドが一緒に付いてってくれてギリギリまで近づいた映像があれです。
―それと対比するかのようにジメサギさんのパートは東京の街中っていうのも印象的でした。
リヒ:それは撮る前から構成を決めていましたね。僕がインドネシアで撮って、ウサギくんは銀座のドーバー前とかいいなあって。
―正に「Around the World」ですね。さっき高校と大学は留学していたとのこともあって、ワールドワイドなイメージを持っているんですけど、リヒトさんはどんな風に活動してきたんですか?
リヒ:僕 Dragon Ashが大好きで。「Summer Tribe」のインストに他人のラップ載せて遊んだりしてたんです。そこからOZROSAURUSとか聴いたりして。感化されて片手間にリリックを書き始めるんです。そしたらいつの間にか、ラップを書いてる比重が上回って、結果今に至るという感じですね。高校卒業した頃は大手のレコード会社に宅録したデモを送ったりとかしてましたね。でも全然ひっかからなくて。才能ないから諦めようってなりました。で趣味でニコニコ動画にアップしたんです。初めてネットに音源をアップしたのが2007年とか2008年くらい。そこで、視聴数が伸びまして。ライブ出てみない?っていうお誘いも来るようになりました。
—ネットラップの聡明期を経て登場した「ニコラップ」ですね。僕は当時その辺を全然チェック出来てなくて。今ではもったいないことをしたなあとつくづく思うのですが。リヒトさんの経歴を踏まえつつ流れや系譜を大まかに教えてください。
リヒ:ネットラップが2000年代初頭に登場し、そこから時代と共に細分化されていって、2007~2009年くらいはちょうどニコ動でラップを投稿するニコラップが盛り上がっていたんですよ。「エンターキー」というイベントにライブ出演した時に、ネットラッパーのらっぷびと※1が観に来ていて、彼が主催する「ビットレートブレイク」に誘われました。そのあと「NRL(ニコラップライブ)」に出演します。当時のニコ動で活躍するラッパーだけでなく広くネットラッパーをフィーチャーしたイベントだったんですが、NRL実行委員会の内の一人、NOBYくん※2が声をかけてくれました。そのときに出演していたのが電波少女(ガール)とかウサギくんでしたね。そのイベントに自主制作音源を物販用に150枚くらい持ってったんです。普通せいぜい10枚~20枚とかじゃないですか(笑)当時は勝手が分からなくて。200とか250人くらいのキャパだったんですけど、70枚くらい売れました。手応えを感じて、自分のやっていたブログでCD欲しい人はメールくださいって告知して、振込先は個人の口座番号載せて(笑)そしたら北海道から沖縄まで、めちゃくちゃ連絡来たんです。手売りで500枚作って完売しましたね。」
※1 ネットラッパー風玉として活動し、ネットラップから「らっぷびと」名義でメジャーデビューに至る。
※2 ラッパーだけでなくミキサーも手掛ける。ニコラップ界隈の兄貴的存在であり生粋のヒップホップジャンキー。
—なるほど。手売りで500枚完売はすごいですね。インターネットパワー。
ヤン:お金持ちになったんじゃないですか?(笑)
リヒ:まあ、臨時収入的なお金にはなりました(笑)それで味しめて今度は流通版のフィジカルリリースに繋がっていったって感じです
リヒト (RihiTo) - Around the World feat Jinmenusagi, Prod.HakobuNe【Official Video】via YouTube
―リヒトさんはジメサギさんとのビートジャックや楽曲を二人でやってきた印象が僕はあるんですけど。どんな風につながっていったんですか?
リヒ:僕が流通のCDを出そうってとき、ハコブネくんっていうトラックメーカーと話をしていて3年前か2年前くらいですね。1月2日とか新年早々にハコブネくんが家に来るってなって、そしたら「Jinmenusagiくんが一緒に来たいって言ってる」って言われて。え?あのJinmenusagi?ってなったんですけど(笑)お互い面識はライブに一緒に出ていたので あるはあるんですよ。でもそれまで話はしたことなかったんです。それで家来て、一緒に麻雀やって、いろいろ話せたんですけど。ウサギ君が帰る朝方に、当時流行ってた「No Flex Zone」のビートジャックやろうって言いだして。いいよーって軽い気持ちで見送ったら6時間後の当日の昼間に、それ用のレックがもう送られてきてて(笑)
―さすが「はやい」んですね。
リヒ:もう、早すぎて(笑)前から書き溜めてたのかなあって思ったんです。でもリリック読んだら、前の晩に一緒に観たテレビの内容とか話した内容がリリックに入ってて。うわやべえってなって(笑)僕もソッコーで書いて1日とかで送り返しました。で、そこから、ウサギくんとのビートジャックシリーズが始まったという流れですね。いつも僕がリリック書いた後、「良くできたなー」って思ってると、ウサギくんのバース送られてきて殺されるっていうのが定番です。鍛えられましたね。
ヤン:俺リヒトさんの事知ったのはやっぱりそのビートジャックシリーズですね。サイファーしてるときに、二人の「No Flex Zone」聴いて、うますぎて絶望したのを憶えています。刺激されてFAKAXAで一番最初にレコーディングしたのも「No Flex Zone」のビートジャックでした。
リヒ:そうなんだ!なんか、嬉しいなあ。
―刺激してくれる相手がいるっていうのは作り手にとっては、やり甲斐がありますね。
リヒ:それから東京以外の場所にもライブで呼ばれるようになり、現場のつながりが出来ていきました。ウサギ君やMato君とか、最近あまり会ってないんですけどMoment※1くんとか、その周りのラッパーとどんどんつながっていきましたね。その勢いで、自分のミックステープをだしました。
ヤン:あの、やばいっす。Momentくん、来ますよ。イベント※2。
※1 韓国出身。大阪に留学のため来日。兵役を経て再び日本で活動。英語、韓国語、日本語を駆使するトリリンガルラッパー。
※2 YUNGYUが主催するイベントについては後編で
「日本のラップ最近あんま聴かないっす。友達の音源は絶対聴きます。」(YUNGYU)
―リヒトさんが一緒に楽曲を作っていたハコブネさんはどんなつながりですか?
リヒ:流通に出すってときに、オリジナルトラックが必要なので、ニコ動つながりで知り合いましたね。好きな音楽性だったし、ハコブネ君しかいないなと。それでお願いしたんです。一緒にファーストアルバムを出しました。
―前にブランドの「KIKSTYO」を良く着ていたのはサポートしてもらってたのですか?単純に好きで?
リヒ:当時いたスタッフさんと仲が良かったんですよ。「インデペンデンスデイ」っていう曲でお店も映ってるんですけど、曲の世界観にマッチしそうだったんでお願いしてみたら撮影させてもらえて。曲のビデオアップしてからKIKSTYOの社長さんも見てくれて喜んでくれてましたね。サポートというと大袈裟かもしれないですけど、CD置かせてもらったりとか、服を割引してくれたりとかラフなお付き合いを当時してくださったんです。
―もうこんな事言うのも今更すぎますけど、そういったファッション的な要素は絶対必要ですよね。僕はいつも誰が、何を、どのビデオで、どんなものを、どんな風に身に着けてるっていうのは当たり前に気にします。
リヒ:そうですね。もっと言うと色んな業種、業態を巻き込んで創作活動を出来るようにするっていうのが僕の理想のビジョンです。今後もそういう風に、双方にアプローチできるようなことはやっていきたいと思っています。
―お二人はリリックとか、どういう世界観でやろうとかあるんですか?作品によって違ったり?
ヤン:そうですね。キャンディハウスビッチ」EPのときはリヒトさんに先に送ってきてもらって合わせて書いた方が多かったですね。結構細かく曲の世界観について二人で綿密に話してから書きました。「She Wants to Move」だけは僕が先に書いたんだっけな。たしか。
リヒ:そのへんはビデオの話と同様、僕は質感を大切にしているので。細かいディテールですね。見てくれている人、聴いてくれている人を不安にさせちゃいけないっていうのは意識として絶対持ってなきゃいけないし。カッコイイものをかっこよく、ちゃんと伝えたいっていうのはいつも思って書いてますね。歌詞でいえば、言葉の選び方とか、ビデオなら身に付けているものとか。ライブのパフォーマンスの仕方とか。SNSの発信の仕方とか。英語の発音の仕方も出来る限りこだわりたいです。
―YUNGYUくんならYUNGYUくんの良さ、リヒトさんならリヒトさんの良さを出せるように、リリックを含め総合的に演出しているんですね。影響を受けたアーティストってお二人はいますか?ラップのスタイルでもいいし、理想像でもいいし。
リヒ:僕はDragon Ashですね。あとはマイケルジャクソン。BUMP OF CHICKENの藤原さんとか、歌詞の世界観がすごく参考になりますね。歌詞の行間を読ませるのが天才的だと思います。繊細でいて力強くもあるバランス感とか。
ヤン:音楽的な影響っていうと僕もバンドが多いかもしれないです。NEW LIFEっていう群馬のバンドとか。
プレンティ:コア過ぎるでしょ(笑)
ヤン:めちゃくちゃコアだね(笑)あとは山梨のバンドのthe courtとか。
―無知でごめんなさい全然、知らないです。
リヒ:この並びでいくと俺めっちゃミーハーみたいじゃん(笑)
ヤン:ラッパーのくくりだと、やっぱりラップがうまい人が基本的に好きです。海外はUSのアーティストも聴きますけど、韓国のラップ聴くことが多いですね。ただ、韓国のどの辺の人達なのか分からないです(笑) 日本語のラップは最近はあんまり聞いてないっす!
プレンティ:そんなこと言ってると、嫌われちゃうよ?(苦笑)
リヒ:いいでしょ。いいと思うものをいいって言えた方が。
ヤン:いいっす!
―逆に日本語のラップしか聴かない人もいるしね。友人と話していても、もっといろんな国のラップなり音楽を聴くと楽しくなるんだけどなーって僕は思うことが多い。僕も全然曲知らないし、もっといろいろな曲を聴きたいです。
ヤン:友達が音源出したりとかはもちろん聴きますよ。応援したいんで。
リヒ:俺もそれはそうだな。
ヤン:人間的に好きな人達の曲はちゃんと聴きます。むしろ聴きたい。埼玉のAWAZARUKAS(あわざるかす)とか。haruru犬lovedog天使(はるるいぬらぶどっぐてんし)とか。
―12月2日のYUNGYUくん主催のイベント、出演者のこと僕、全然知らないんですよね。あえて前情報もいれてなくて。YUNGYUくんから直接今日ね、それぞれ聞いてみたかったんです。
ヤン:そう。知ってもらいたいんです。だからこそ甲府でやるので。僕の好きなアーティストを色々な人に見て聴いてもらいたい。それがイベントをやる第一の目的ですね。
プレンティ:知らないからって来ないのはすげえもったいないんですよこれ。だから来てほしい。
リヒ:山梨に限らずだけど、アンテナ張ってないとなかなか分からない、知らないって人のが多いんじゃないかな。
ヤン:そうなんですよねえ。そこが俺らの弱いところで。オーガナイザーとして活動しているわけじゃないから、難しいですよね。困ってるんです。
―フライヤーで文字や写真の並びだけ見ても、なかなか伝わらないってのはあるよね。だから僕は仕事でもそうなんだけど、誰が見ても分かりやすく書くっていうのが前提としてあります。当然、魅力を伝えるっていうのが一番大事な使命だから。で、今回のインタビューなんだけど、こんなにカッコイイやつらがいるのに、「わからない、知らない」ままにしておくのはもったいないって思ってお話を聞きたかったんですよね。僕に力はないけど、少しでも役に立てないかなって。一般層というか数少ない若者たちに知ってもらいたい。知らないもの、わからないことを知った、見た、聴いたときの初期衝動。そのワクワク感を少しでも共有したくて自分のブログの中でインタビュー企画をしようって思ったんです。僕含めメディアに携わる人がもっと、そういう世間的に無視されているけど、イイと思うものをもっと発信していくべきだとも思うし。きれい事かもしれないけど本音を言うと、話題だからとか知名度があるからとか、今すぐお金になるかっていうより一緒にトピックを作っていくような関わり方がしたいんです。根っこは超ミーハーなんですけどね。
ヤン:マジで嬉しいっす。無視され続けてきてるんで(笑)
―僕もですよ(笑)存在を無視され続けてるからね(苦笑)
リヒ:頑張っている人はみんなそう思っていると思います(笑)だからこそ自分で出来ることはしっかりやることが重要ですよね。こういったブログも、SNSひとつ取ってもそうだし。
—では、あらためて12月2日のイベントの出演者について、YUNGYUくんから教えてもらってもいいでしょうか。 (後編はYUNGYUくんが主催するイベント「ily」(イリー) についてお届けします)
左:YUNGYU 右:リヒト
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リヒト(Rihito)
東京 生まれ、東京 育ち。 2008年 5月 ネットに音源をアップし始める 2011年 1月 自主制作盤 『Jack Your Playlist 』リリース 2015年 12月 全国流通版 1stアルバム『Cosmic speed』リリース 2016年 6月 フリーDL MIX TAPE『When I'm Gone』リリース 2017年 7月 リヒト×YUNGYU FREE EP 『キャンディハウスビッチ』リリース
YUNGYU
山梨県出身。地元の仲間たちと「FAKAXA」を結成し2015年 活動開始。パーティー「ily」を不定期で開催しながらネットで音源をコンスタントにリリース。都内中心に精力的にLIVE活動するも「FAKAXA」は活動休止に。現在はイベントや音楽で繋がった県内外のアーティストと客演や楽曲制作を行う。
2015年 12月 EP『FATE』リリース(YUNGYU)
2016年 2月 EP FAKAXA x AWAZARUKAS『2g』 リリース
2017年 1月 1st. MIXTAPE『Laketape』リリース(FAKAXA)
2017年 7月 リヒト×YUNGYU FREE EP 『キャンディハウスビッチ』リリース
Twitter: @quqqqupapi
Instagram: https://www.instagram.com/quqqqu/
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リヒト×YUNGYU FREE EP 『キャンディハウスビッチ』
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