SIA,M.I.A,MAJOR LAZER
毎年寒くなってくると、グラミー賞が近づいて来た気がする。なので今回はチャートを彩り、華々しきもミステリアスな魅力を漂わせる3組のポップアーティストについて掘り下げてみようと思う。
まず、 伸びのある独特な歌声が魅力的な顔出ししないアーティスト、SIA(シーア)。彼女のキャリアは長いが、デヴィットゲッタのタイタニウムという楽曲でその名を知った人は多いのではないだろうか。過去は普通に顔出ししていたようで検索すると簡単に見つかる。突如として顔を出さなくなったシーア。原因は病であるとも、マーケティングともいわれているが、その徹底ぶりは凄まじい。PVはもちろんのことグラミー賞でのパフォーマンスやレッドカーペットに至るまで、彼女の分身的な天才バレエダンサー、マディー・ジグラーを従えて登場し話題となった。(本人はセットの片隅で終始、観客に背を向けて歌っている。)
さて、しばらく先述したマディちゃんに自身の作品性と世界観を投影し、表現してきたシーアだったが、来年のニューアルバム『This is Acting』からのシングル『Alive』でニュー・シーアが登場した。特徴であるおかっぱアタマはそのままに、シーアを演じるのは日本の天才空手少女、高野 万優(たかのまひろ)ちゃんである。キレキレの演舞を披露する彼女は、天才空手少女として動画がバズ。SNS上のバイラルメディアで度々紹介され、地上波にも飛び火。CMにも起用されるほどに。
今楽曲だけの起用なのか、それとも今後も万優ちゃんが登場するのか、シーアの今後の作品が楽しみである。
シーア同様、強くミステリアスな女性アイコンとして活躍するシンガーM.I.A(エムアイエー)の動向も見逃せない。Missing In Action(戦闘時行方不明)の頭文字をとりM.I.Aというわけだ。文字通り、インドの革命軍に属し行方不明になったという父親に向けたメッセージであるという。フランスのサウンドプロデューサーSurkinの別名義、GENER8IONとともに制作したThe International Sound Pt.2では、武闘派少女を題材にしたヴィデオを公開。舞台は中国最大の武術学校。そこで生活する少女たちの日々が綴られている。それはわたしたちの想像する学校生活とは違う。先に紹介した高野 万優ちゃんのような武術を志す少女が36000人出演。この時期、日体大の集団パフォーマンスが話題となるのが日本の通例だが、年端もいかぬ少女たち36000人が織り成す演舞の迫力も圧巻である。
そんなM.I.Aも新作に向けてニューヴィデオをリリース。これまたかっこいい女性たちのパフォーマンスがフューチャーされている。
さて、シーアとM.I.Aのヒストリーの影に登場する共通のサウンドプロデューサーがいる。Diplo(ディプロ)。SkrillexとのJACK UやMajor Lazerでお馴染み、ヒットの影にこの男ありといえるほど、飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子である。ハンガーゲーム2のサウンドトラックに収録されているシーアとThe Weekendとの楽曲「Elastic Heart」のプロデューサーにクレジットされているのはディプロだ。この曲は後にシーアのアルバムにソロバージョンが収録された。(楽曲を気に入ったシーアは当初ケイティ・ペリーが歌うために歌詞を書いたが辞退したので自身が歌うことにしたのだとか。※僕が英語詞を調べる際に使っているおよげ対訳くん参照)
ちなみにこのビデオの分身マディちゃん、プライベートではいろいろ騒動を巻き起こして面白い実力派俳優シャイア・ラブーフと戦いを繰り広げる。
M.I.Aの存在を広く世に知らしめた曲と言っても過言ではない「Paper Planes」のプロデューサーもディプロなのだ。(この曲で共同制作者のスウィッチと始めたプロジェクトがMajor Lazerなのだが、スウィッチは脱退、新たに二人のクリエイターを迎え現在はディプロ含め3人体制となっている)当時、日本のクラブでかかりまくってリミックスも多数つくられたヒットチューン。中毒性の高いトラックを作らせたら右に出るモノなし。
そんなディプロが、Major Lazer名義で、これまた要注目のDJ SNAKEとともにこの夏、満を持して新たな歌姫を世に送り出した。今夏のダンスフロアを沸かせまくった「Lean on」にフィーチャーされたアーティスト、MØ(ムー)である。元々海外では人気の高かったデンマーク出身のシンガーだが、この曲をきっかけに日本での知名度も浸透し、来年あたりは来日の可能性も高いのではないだろうか。
余談だがMajor Lazerを1人のアーティストだと思っていた時期がある。アートワークでよく用いられるこの男、ジャマイカの特殊部隊員で、彼の命令によりディプロたちが音楽を作っているという裏設定があるのだ。
陰と陽。日と月。今では対極にあったはずのサブカルチャーとポップカルチャーは表裏一体。それは音楽の世界でも同じく、ミステリアスで強い女性像を体現するアーティストがヒットを続けるその裏で、サウンドクリエイターたちは、ヒットメイカーとして名乗りを上げるべくしのぎを削る。お互いを支え合うかたちで作用しているのだ。ディプロはそのわかりやすい1例。Major Lazerは12月13日に新木場Studio Coastにて来日公演を予定している。今や世界的なビッグムーヴメントを作り出す、彼らの音を体験してみるといい。ポップカルチャーのコアを知ることで、次の音楽の流行が予見できるかもしれない。
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