KOFU RESORT JAM

県内ではテレビCMが打たれているので山梨に住む人はすでにご存じだろう。来たる9月30日。僕の住む街で、日本で初めて(公式HP発表)の県庁舎敷地内での野外音楽フェス「KOFU RESORT JAM(以下:RESORT JAM)」が開催される。会場となる山梨県庁噴水広場は職員だけでなく街行く人の憩いの場として民間に開かれた場である。休日は子ども連れの家族の姿も頻繁に見られる。ここ数年、県庁周辺は再整備開発が進められ、敷地内も大きく変わった。趣深い旧庁舎を残しつつ、新しさが融合するかたちだ。今まで、新しい県庁で3Dマッピングなどのイベントは行われてきたが、野外音楽フェスが行われたことは一度もない。甲府駅周辺ではビールフェスやグルメ系のイベントが頻繁に開催されており、盛り上がっている。が、しかしもっと音楽を充実させればいいのにといつも物足りなさを感じていた。地元アーティストやメジャーアーティストが交わり、場を盛り上げる演出やプログラムがあってもいいはずなのだ。空間に流れる音楽が、ないがしろにされてしまっている気がして残念でならない。そんな鬱憤を晴らすかのように開催される公共の場での野外音楽フェス。初の試みに向けて実行委員会は慌ただしい日々を送っている。あえて運営に携わる人々やアーティスト云々を掘り下げずに本稿では別の視点で「RESORT JAM」を紹介する。  

役割分担がきっちりと出来た上で、主催者、出演者、会場、お客さん、みんながハッピーなコンテンツを提供するイベントを作りあげることは難しい。ある種の理想であり必ずしもその理想を成し遂げる必要はないが、大規模な興行で集客するとなると主催者の負担やリスクが大きくなることは避けられない。ここ一年ほどは、映画館跡地をイベントスペースとして利用するKOFU101のオープンによってメジャーアーティスト招致の動きが活発化してきている。KOFU101のイベント管理・運営を取り仕切る会社「HAPPY KING」は「RESORT JAM」を先頭に立って牽引する。このイベントの構想を実行委員会の人間から聞いたのは1年以上前になる。地道な準備を重ね地域の店舗、団体、公的機関と協力関係を結び、開催される運びとなった。フェスの醍醐味は同じ場所で音楽を共有し盛り上がる一体感だ。4500人規模の声援、臨場感のあるライブ、迫力のサウンドと街中で交わるのは想像以上に圧倒されるはず。地域の団体とも協力し、同イベントで提供されるフードは甲府の人気店が担当。食器などはリユース素材が使われるなど環境への配慮もなされている。

実際の県庁噴水広場。

メインイメージになっている県庁舎を正面に観る。特設ステージ側からの視点。

普段はこんな感じでクルマや人が往来する。夜の時間は中央部分に噴水が起こり、ライトアップされた県庁舎が観られる。

スクランブル交差点を渡り防災新館の向こうが噴水広場となる。

(9.25 追記)

当日、写真側からは入場が出来ないので甲府駅からのマップを参照してほしい。

【RESORT JAM 2017 access from Kofu station】 甲府駅南口から会場までのアクセスを紹介します。 駅から徒歩3分で会場入り口に到着致します。 入場口は平和通りからのみとなります。 


過去にはアパレルショップ主導で、メジャーアーティストを招致したクラブイベントが甲府では数多く行われてきた。現在でもアーティストとの繋がりが強く、自力のある人、またはそのお店によって開催されているが全体としてみるとごく一部に限られる。しかしながら甲府にはさまざまジャンルの音楽イベントが月にいくつも開催されており、地元のDJ、MC、ダンサーやグラフィティライター、アーティストによる活動によって、クラブイベントが守れられていることに敬意を忘れてはならない。個人やチーム単位で定期的にイベントを開催することは、時間もお金も体力も膨大に使うことだ。実質的なリターンは活動運営費に充てられるため、ハコ代、フライヤーなどの制作費、PR費用やアーティストを呼んでいた場合そのギャランティをペイすれば主催者が得られる報酬は皆無に等しい。ビジネス的な側面よりも音楽並びにクラブカルチャーを愛する気持ちで甲府の音楽と娯楽が支えられているのである。 余談だが、アパレルショップやブランド単位で行われるポップアップイベントに、DJが参加するイベントは都内ではスタンダードであるが甲府にはそのような事例は少ない。10年以上前にインストアDJをコンスタントに開催しているショップがあったが、とても画期的だと思った。ショッピングに出た先でDJの生の音を聴き、交流できるカルチャーの入り口といえる体験だった。

地元アーティストによって支えられるインディペンデントなイベントと、興行としてのショービジネス的なイベント。両方が共存できてこそ山梨の音楽はより豊かなものになっていくはなっていくはずだ。松本の「りんご音楽祭(以下:りんご)」は地方のフェスのロールモデルとして絶対的な知名度とステイタスを誇る。始まりはたった一人の男の意地とプライドと野心だった。りんごは初開催からの数年、人もまばらだったと話に聞く。しかし、今では音楽フリークたちの「今年行きたいフェスリスト」(手帳の中、アタマの中に必ずあるであろう)の筆頭に並ぶほどの人気フェスとなった。実際に去年足を運んだが、雰囲気や会場の作り込み、アーティストのキュレーション、全くもって素晴らしく、楽し過ぎるフェスだった。りんごではフェスの日程が終わっても、松本市内各地でりんごに関連したイベントが行われる。松本を訪れたお客さんは、松本市内を観光がてらクラブサーキットして地域の音楽シーンやアーティストにも触れられる。マスとコアが手を取り地域とそこに足を運ぶ人、すべてを巻き込んだ理想的なかたちだと思う。また、同じ山梨県山中湖村で行われているスペースシャワーTV主催で毎年行われている人気フェス「SWEET LOVE SHOWER(以下:ラブシャ)」についても村内の宿泊施設は予約で満室となる。周辺地域の観光・経済に大きく付与していることから開催には村が大手を奮って協力している。

【現在までに発表されているRESORT JAM 出演アーティスト】


 「りんご」や「ラブシャ」のように「RESORT JAM」が持続可能な運営をすることが可能となれば、甲府の経済はもちろん文化的にも大きく貢献するポテンシャルを持っている。現状、東京、松本、静岡とツアーを回っても、山梨には訪れないアーティストは多い。(とはいえ地元テレビ局主催のホール規模の公演は割とある。もっとストリートに沿ったコンテンツが増えればいいなと個人的には思う。)文豪、太宰 治は1939年「愛と美について(竹村書房)」収録、1982年文庫化された「新樹の言葉(新潮文庫)」にて甲府を次のように評している。

「派手に、小さく、活気のあるまちである。よく人は、甲府を、「擂鉢(すりばち)の底」と評しているが、当っていない。甲府は、もっとハイカラである。シルクハットを倒さかさまにして、その帽子の底に、小さい小さい旗を立てた、それが甲府だと思えば、間違いない。きれいに文化の、しみとおっているまちである。」「新樹の言葉/太宰治(新潮文庫)」より抜粋

今ではシャッターを閉めてしまっているお店が目立つ桜町周辺についても、太宰は書き記す。

「甲府で一ばん賑にぎやかな通りで、土地の人は、甲府銀座と呼んでいる。東京の道玄坂を小綺麗に整頓したような街である。路みちの両側をぞろぞろ流れて通る人たちも、のんきそうで、そうして、どこかハイカラである。」「新樹の言葉/太宰治(新潮文庫)」より抜粋

そう。かつてこの街は、小粋でハイカラだったのだ。そのセンスはわずかではあっても現代に受け継がれていると僕は信じている。

開府500年という節目に向け、自治体は活気づく。その中で、こういった音楽フェスは若者世代の地域への関心の起爆剤にもなりえる。そこに生きる若者たちが置いてけぼりにならないよう、地域を誇れるような企画が溢れることを切に願い、自分も貢献できることはしていこうと思う。「すりばちの底」に、小さな旗を立てようではないか。甲府で活動する各々の旗を集めて持ち寄れば、立派でハイカラな旗が再び甲府の地にたなびく日は近い。そういえば実行委員会代表はマンガ「キングダム」が好きだと言っていた。果たして今回の試みが中華統一ならぬ文化的な甲府統一実現のあしがかり、もしくはヒントになるかもしれない。独裁的で支配的な統一ではなく、(キングダムの)政の言うような光ある実現が望ましい。それに至るにはそこに生きる民衆が何を感じ、どう変化していくかが鍵となるだろう。主役は豪華な出演アーティストでも主催者でもない。そこに価値を見出しお金を払って足を運び参加するお客さん一人一人なのだ。

  僕の遠縁の親戚にあたる、街の兄貴的存在として慕われる人物が制作に携わる地元フリーペーパー「Parupi」甲府版9月号に運営メンバーの詳細なインタビューが掲載されている。県内コンビニなどで配布されているので詳しくは参照してほしい。ソールドアウト間近ということで、近隣の人については手売り分も解禁されたそうなので、「eチケットの買い方とかわかんないしマジ卍」という人はリンク先の僕の親戚に気軽にお問い合わせを。知り会いであろうとなかろうと紳士的にウェルカムしてくれるはずだ。 



(9.25 追記)

いよいよあと5日!


タイムテーブルも公開された。

オンラインチケットの購入についてはそれぞれ下記サイトにて。自分でやりやすいサイトをチョイス。 

チケットぴあ


イープラス

チケットペイ


チケットコードなどはオフィシャルウェブサイトを参照。

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