C.H.I 池磊個展 『中國最先端 ― CHINESE CUTTING EDGE ―』を観た
C.H.I 池磊(チリ)の個展『中國最先端 ― CHINESE CUTTING EDGE ―』が、11月17日〜2月14日まで東京・渋谷のDIESEL ART GALLERYで開催された。展示されていたのは僕らの知らない中国。陳腐なステレオタイプなど木っ端微塵に吹き飛ばす、強烈な狂気。そして怒りだった。
僕たちは中国を知らない。知っているのは学校の教科書に載っていた、あるいはテレビで放映されるステレオタイプの中国だ。本当は習近平よりも马思唯(MaSiWei※後述するHigher Brothersのメンバー)について知りたいし、中国共産党の仕切る全国人民大会よりも、Higher Brothersを筆頭とした中国のヒップホップアーティストが気になってしまうのだ。(国際情勢についてもきちんと知っておかなければいけないことは分かっている)
いつだってアートがその本質を教えてくれる。音楽や芸術だ。日本の米原康正という敬愛すべき編集者/フォトグラファーはそれを地で、個人でやってのける。そこにしびれる。憧れる。Weibo(微博・ウェイボー、以下Weibo)で236万人のフォロワーを持ち、日本と中国のカルチャーを行き来する。いつだってそのスタンスは、一貫してメガトン級のカウンター。中国、ひいてはアジアと日本のカルチャーの相互理解と発展を促すアドレナリンのような男が、キレキレの中国アーティストをキュレーション。米原康正と同じように、C.H.I はカメラと編集をバックボーンに持つアーティストである。
美しさの中に潜んだ違和感たち。作品単体として成立しているのはもちろん、他の作品と並ぶと違った印象に。
ホルマリン漬けにされた人間が映された「中国新人類」シリーズ。ここに映し出されている人間は現代社会において独自の進化を遂げた異形の存在だ。親切なディーゼルアートギャラリーのスタッフさんによれば、毎日満員電車の吊り革につかまるために、腕が背中から生えた人や、やることが多く、手が増えた子どもなどが表現されているそうだ。なんだ。僕ら日本人となんら変わらないじゃないか。
「国産精神病者」シリーズは、共産主義や中国の富裕層を強烈に風刺した作品だ。
展示されているなかでいちばん新しい「Real Fake」シリーズ。自分で撮影した写真を使用せず百度(バイドゥ)という中国最大の検索エンジンを介し、ネットから引っ張ってきた画像をコラージュしたものだ。ファッションやアダルト画像からキャプチャー。背景に「フェイク」商品(あえて1発でニセモンじゃん!と分かる)の画像を用いている。コミカルにたっぷりシニカルを含ませた作品だ。
「Real Fake」の作品性にすごくシンパシーを感じた。
C.H.Iの根底にあるのはパンクロックである。生粋のパンクス。かつてはパンクのイベントフライヤーなどのアートワークを多く手掛けてきた。写真作品やコラージュ作品からもそのマインドはひしひしと伝わってくる。痛快といわずしてなんというか。怒れるイカれたパンクスのなれの果て。ドブネズミみたいに美しい、狂気と怒りを孕んだ中国アートシーンの最先端を見た。
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