TAKASHI OGAMI/ETHAN CURZON/BRYZOID/KEISUKE YAMADA/SHINJAE LEE/POHALSKI at SHUKYU POP UP VACANT

(右から)TAKASHI OGAMI(SHUKYU MAGAZINE)/ETHAN CURZON(OBSCR)/BRYZOID(OBSCR)/KEISUKE YAMADA(CITY BOYS F.C.)/SHINJAE LEE(NIVEL CRACK)

3月25日、26日と「SHUKYU MAGAZINE」が原宿VACANTにて「CITY BOYS F.C.」とマレーシアの「OBSCR」韓国の「NIVELCRACK」とともにポップアップショップを開催。フットボールカルチャーをバックグラウンドに持つ気鋭のブランドたちが一堂に会した。オンラインでしか手に入らなかったアイテムが自分の目で見て、触って、買える。デザイナーも会場にいるため、コミュニケーションを取りながらショッピングが出来るのも嬉しい。「SHUKYU MAGAZINE」編集長の大神崇さんが彼らとの間を取り持ち、その場を訪れた者とをコネクトしてくれる。もっとも、物書きをしている僕としては大神さんに会えるだけでも光栄な話だ。資生堂の花椿やPOPEYEにも寄稿し、会場となったVACANTの創設にも関わっている。名前を聞いたときは思わず本人を目の前にして驚きを隠せなかった。雑誌やウェブメディアのクレジット表記では幾度となく目にしていた人物であり、お会いしてみたいと思っていた編集者の1人だったからだ。地方住まいの生粋の田舎者なら、なおさら貴重な機会である。編集長直々に接客対応してくれているとは想像もしておらず、嬉しい誤算だった。

誤解を恐れずに告白すると「SHUKYU MAGAZINE」とその周辺のことを知るまで、サッカーがうまい人たちに対し、ヘタクソな自分が優れている点はファッション性、それに関する知識だと自負していた。恥ずかしながらピッチの外や対戦相手からすれば、「格好だけのヘボ」である。おそらく運動能力に長けた人間にとって、最も鼻につくタイプだ。もちろん全力でプレーし、そう思われることは分かっていながらも、スポーツに対し長年コンプレックスを抱いていた自身を鼓舞するには、そういった面で威張るしかなかったのだ。この奢りとも取れる勘違いを訂正するとともに、運動音痴の戯言と思って寛大な視点でご容赦を願いたい。

ここ10年〜15年くらいサッカー好きが着るブランドはある程度にまで絞られていた感がある。ブランドコンセプトやプロダクト自体はかっこいいものだが、着る人の着こなし方によって、画一的なイメージが僕の中に染みついてしまっていた。僕の狭い価値観とコンプレックスによる偏見の中でいつしか、新鮮味は薄れサッカーとファッションの中に隔たりが生まれていたように思う。しかし昨今はより多くの選択肢が出来たわけである。国内外を問わず有名な音楽アーティストが、ビデオにヴィンテージのゲームシャツを着て登場し、ストリートブランドもサッカーをオマージュしたゲームシャツをリリースする。90年代のリバイバルとアップデートを繰り返し、スポーツとファッションが年々密接に近づいている世界的なムーブメントの中で、よりドメスティックな各地域のブランドが成長。SNSのネットワークを経て世界中に拡散している。つまり、今、サッカーはデザインとクリエイティビティの融合によって、急速な多様化と進化を続けているのだ。今回のポップアップはその最先端に触れられるものだった。日本、韓国、マレーシア、アジアのサッカーカルチャーとファッションカルチャーとの結びつきを強く、直接肌で感じ取ることができた。それは、並びに僕の「サッカー」に対しての小さな反抗であり勘違いであった「ファッション性」の優越感を瓦解させることになったわけだ。甚だしい勘違いであったことはもちろんのこと、逆に、サッカーを楽しむ要素が僕にとっては増えたことを意味する。これはいよいよ、楽しくなってきた。

「NO IBRAH NO PARTY」Tシャツは韓国発NIVELCRACKのもの。PSG(パリサンジェルマン)のカラーリングとユニフォームデザインをサンプリングし、ユーモアが効いたメッセージをプリント。イブラファンならばマストな一枚。


僕とはうってかわって、弟は昔から運動神経が良くスポーツ全般の知識に詳しい。特にフットボールに関しては熱狂的だ。僕自身は疎かったが、友人や弟、周囲の熱に当てられて、フットボール関連のさまざまな情報を得るようになっていった。仕事で地元のJリーグ所属クラブの監督の取材をすることになった際は、ペップの自伝を読んでみたり、好きな作品の新刊を描いている海外作家が、イブラヒモビッチの自伝を書いていて、目を通して見たり。自然と関連の書籍に関心が向くようになった。サッカーについて何か面白い切り口の雑誌がないか探していたときに、弟が書棚から取り出してきたのが「OFF THE BALL」と「SHUKYU MAGAZINE」である。僕にとってこの2冊は革命的だった。いわゆる普通のサッカーマガジンとは一線を画す内容だったからだ。第一線で活躍する有名な選手のインタビューやクラブチームの戦力分析ではなく、そのルーツやアイデンティティ、取り巻く環境や人に視点を置いていた。アスリートスポーツとしてだけでなく、カルチャーとしてフットボールの魅力を伝えるスタンスに、大きな衝撃と感銘を受けたのだ。その影響から、今、サッカーは音楽で言うならばメジャーではなくインディーズ。とりわけローカルなアンダーグラウンド事情が非常に面白いことを知るに至る。

パリ、Le Ballon FC。ニューヨーク、Nowhere FC。これらはその都市に根づく、地元フットボールチームだ。ただフットボールをするだけでなく、アンテナショップを持ち、アパレルラインやグッズを展開。独自のブランディングで世界中のフットボールフリークに発信し、ファッション方面からの支持を獲得している代表的な例である。さらには自分達でリーグや大会を主催し、運営する。今そういったムーブメントが世界各地で起こっているのだ。ここ、日本でもナイキのサポートを受けるLIGA TOQUIOなどが参加し、アパレルブランドのプレスやスタッフ、ヘアサロンのスタイリストなど、ファッションカルチャーに造詣の深い職種の面々が結集、運営されているPリーグが話題だ。発足当初、1dayマッチの大会だったが、年々人気と規模を拡大し、3部15チームが名を連ね、凌ぎを削る。昨季よりadidasが世界展開し、大会運営とブランディングを続けるTangoブランドがスポンサーに付いた。Pリーグの運営を務める人物たちはいずれも過去には名門、強豪校と呼ばれる高校の出身者だ。ブランクがありながらも、「もう一回、好きなサッカーで、本気のバカをやろうぜ」。という強い意思から始まり、コミュニティは巨大なクラウドへと成長を遂げたのだ。詳しくは「SHUKYU MAGAZINE」アイデンティティ号にてインタビューが掲載されているので読んでみて欲しい。

ポップアップショップに並んだアイテムたち。各ブランドのプロダクト全てに、サッカーカルチャーに対するリスペクトと愛が表現されている。


宮城県と東京都、2つに拠点を置くCITY BOYS FCは「SHUKYU MAGAZINE」を始め、NIVEL CRACKなどブランドにアートワークを提供。オリジナルのアパレルラインを展開し人気を集めている。仙台市内の古着屋さんにプロダクトを置き、地元に根ざしながらもオンラインショップは英文表記、ワールドワイドなシッピングに対応している。各地でそのデザイン性はヒットして、交友関係を広げ海外ブランドやサッカーチームと積極的にコラボレーションする。サッカーに精通していれば、思わずニヤリとしてしまうトピックが散りばめられている上に、洗練されたデザインが魅力だ。

Pリーグを運営する中心人物の1人でありリーグの現王者FC VOLT所属の「ポハルスキー」さんもその場に居合わせたのでお話が出来た。「僕は美容師で、全然うまくないんです。チーム力で勝ち取った優勝ですよ。」ああ。この人、絶対にやばいうまい人だ。スポーツコンプレックスの僕は確信した。僕との戦力差はきっとスポ小とリーガエスパニョーラかそれ以上だろう。サッカーが分からない人向けにドラゴンボールで例えるならば、フリーザとヤムチャ、セルとチャオズ、ブウ(純粋悪)とミスター・サタンである。「ぜひ、山梨の皆さんで、サッカーしに来てくださいよ。いつでも連絡ください。」社交辞令とはいえ、胸襟を開き、いつでも挑戦ウェルカムなスタンス。背が高く、イケメンで気さくな紳士でいて、サッカー好きでオシャレ、どのパラメータも高水準だ。まさにポドルスキー並のポテンシャルである。こんな人たちが、日々、本気でぶつかり合いながらセンスとスキルを磨き合っているのか。どんどん僕のピッチ上での居場所はなくなっていくではないか。でも、それでいいのだ。この日のポップアップショップで得た数十分間の邂逅は、僕にとっては非常に新鮮で有意義なものだったからだ。他愛もない会話ではあるが、縁遠いと思っていたサッカーが僕にくれた贈り物は、リーグ終盤の勝ち点のように尊いものだった。

この記事であえて文脈に沿いながら「フットボール」と「サッカー」が混在しているのは下記の「SHUKYU MAGAZINE」アカウントに記されたテキストと、CITY BOYS FC×OBSCRによる、今回のポップアップにてローンチとなったカプセルコレクションへのオマージュである。スポーツコンプレックスな僕にも平等に楽しむ要素を与えてくれ、世界の諸問題に対しサッカーという切り口から光を当てる、SHUKYU MAGAZINE,CITY BOYS FC,NIVEL CRACK,OBSCR,にRESPECTを込めて。


マレーシア・クアラルンプールに拠点を置くブランド「OBSCR」と東京の「CITY BOYS FC」との最初のコラボレーションは “Equality(平等)” をテーマにしたカプセルコレクションです。
いま全世界が様々な人種的問題に直面するなかで、私たちはどれほど大きくても小さくても声をあげて人種差別と戦い続けていくでしょう。サッカーとは、全世界で通じる美しい共通言語です。それは国によって”フットボール”または”サッカー”と呼ばれますが、その精神が変わることはありません。

SHUKYU Shop information OBCSR×CITY BOYS FC capsule collection - マレーシア・クアラルンプールに拠点を置くブランド「OBSCR」と東京の「CITY BOYS FC」との最初のコラボレーションは “Equality(平等)” をテーマにしたカプセルコレクションです。 - いま全世界が様々な人種的問題に直面するなかで、私たちはどれほど大きくても小さくても声をあげて人種差別と戦い続けていくでしょう。サッカーとは、全世界で通じる美しい共通言語です。それは国によって”フットボール”または”サッカー”と呼ばれますが、その精神が変わることはありません。 - このコレクションは3つのアイテムで構成されています。 - 胸に ”FOOTBALL” ”SOCCER” のそれぞれの文言が刺繍されたバイカラーパーカー。袖にはUEFAのRESPECTワッペンをイメージしたデザインと、クラシックサッカーボールのデザインの刺繍が施されています。 - “Respect” という文言が背中に大胆にプリントされたTシャツ。表面のグラフィックはアンリ・マティスによる1910年の絵画「La Danse」に触発されました。 私たちはどんな人種であっても、一緒サッカーをプレーし楽しむことができるということを示しています。 - ”El Tigre”の愛称で呼ばれたブラジル代表で初の黒人選手、アルツール・フリーデンライヒをモチーフにしたトートバッグ。彼はキャリアのなかで人種差別による無数の障壁に直面してきました。 私たちは彼に敬意を表し、サッカーは美しいスポーツでなければならないということを伝えるためのアイテムです。 - このコレクションはSHUKYU Magazineによる二日間限定のPOP-UP SHOP「SHUKYU Shop」でのみ購入可能です。 - SHUKYU Shop with OBSCR × NIVELCRACK × CITY BOYS FC - 25(sat)-26(sun) March, 2017 12:00-20:00 at VACANT (3-20-13 Jingumae Shibuya Tokyo) - SHUKYU Magazineによる「SHUKYU Shop」。 今回は、アジアを拠点にサッカーやスポーツをテーマにした物作りをする、東京のCITY BOYS FC × 韓国・ソウルのNivelcrack × マレーシア・クアラルンプールのOBSCRとのコラボレーションにより、二日間限定のPOP-UP SHOPを原宿・VACANTで開催します。 期間中は、各ブランドのデザイナーも会場にいる予定です。ぜひお越しください。 #shukyu #shukyumagazine #cityboysfc #nivelcrack #obscr #shukyushop

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マレーシアのOBSCRのゲームシャツ。ストリート要素の強いデザイン。オンコート、オフコート問わず着られるバランス感覚が絶妙。


「SHUKYU MAGAZINE」の特集になぞらえて、僕の「IDENTITY(アイデンティティ)」と「ROOTS(ルーツ)」について少し蛇足する。僕は運動神経というものを持ち合わせていない。なのでスポーツ全般が苦手だ。中学の頃にテニスをやっていた。最後の地区予選ですぐ負けて、涙を流して以来本格的にスポーツに取り組んでいたことはない。音楽、雑誌、サブカル、などいわゆる「文化系」という今でこそ、意識高めなステイタスを獲得している嗜好分野に傾倒した。しかし、最近そんな僕も面白いスポーツに出会った。フットサルである。出会ったという表現は正しくないかもしれない。出会ってはいたが、苦手意識からそこまでのめりこんではいなかった。やってはみるものの、たいてい嘲笑の対象である。今ではそれも「個性」と割り切って楽しんでいる。ヘタクソなりに全力でやって、点が取れなくとも雰囲気を盛り上げたり士気が上がればもうけものだ。厳しい局面でミスをすればもちろん、ピッチ外から愛ある檄をとばされるし、決めきれないとこんな僕でも生意気に悔しい。以前から、幼少期から知る旧友たち、大人になってから仲良くなった近しい人たちが、フットサルをずっと続けていることを知っていた。夢中になれるものがあるということと、それを共有出来ることを、どこかで羨ましく思っていたのかもしれない。年齢もあって自身の体型(SHUKYU MAGAZINEでいう『BODY「ボディ」』は僕にとっては最近、一番力を入れて改善に取り組んでいるテーマでもある。)が気になり始めたこともあり、音楽・イベント関係で関わりのある先輩チームの練習に、地元チームと共に混ぜてもらうことになった。そこで偶然に、仕事で関わる先輩と顔を合わせたり、新しい繋がりが生まれたり、人と人が交わる機会に溢れていることに気づいた。職業や年齢、性別、育ってきた環境がバラバラでも、コートのなかでは等しく一つのボールを追いかける。フットサルは個の力では勝てない。逆に言うと、テクニックがなくても、チーム力の高さでジャイアントキリングを起こせる可能性が大いにあるスポーツなのだ。そういったゲーム性の高さと友人たちとの交流が楽しくて、僕の中の苦手意識が楽しみに変わった。ヘタクソに変わりはないが僕は週に一度、フットサルに興じている。

SHUKYU MAGAZINEと交流のあるLeballon FCとBled FC、Hender Schemeとのコラボユニフォームが展示。出来る事なら本気で欲しい。Bled FCのZINEもポップアップストアで販売されていた。


CITY BOYS FCがアートワークを提供した “DON MAFIFA”は資本主義化するサッカーの側面をコミカルに揶揄する。日韓ワールドカップのロゴをリバイバルしたキャップも世代的に刺さるデザイン。


SHUKYU MAGAZINE編集長 大神さんとPリーグ/FC VOLTポハルスキーさん。シミュレーション育成ゲームだったら、これだけで経験値もらえてパラメータ上がっている気がする。

クローズ間近に現れた見ず知らずの僕を、寛容に迎え入れてくれた。Bigup&Respect NIVELCRACK/OBSCR/CITY BOYS FC/and SHUKYU MAGAZINE.

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